Wi-FiでIP電話を使うメリット・デメリット8選!

コミュニケーション手段の急速な進化に伴い、アナログ回線の契約数は著しく減少しています。利用者が減少する中で、電話網の維持コストは相変わらずで高騰しています。

そのため、NTT東日本・西日本も2024年1月から加入電話(アナログ電話)をアナログ回線網からIP網に切り替える計画を公表しています。

このように電話体系も変化しつつある状況の中、多くの企業がIP電話の導入を検討しています。

ただし、IP電話の仕組み、従来の電話回線との違い、またWi-Fiを活用したIP電話に対する懸念も存在するのではないでしょうか。

そこで本記事では、IP電話の仕組みや固定電話との比較、そしてWi-Fiを介してIP電話を利用する際の利点やデメリットについて詳しく解説します。

目次

IP電話とは

IP電話は、インターネット回線を介して相手と通話できる電話システムです。

かつて、通話には専用の固定電話回線が必要でした。しかし、電話技術が進歩し「インターネットプロトコル」と呼ばれる通信規約(プロトコル)を利用することで、インターネット回線による電話通話が可能になりました。

この技術を用いることで、電話機だけでなくタブレットやパソコンからも電話が利用でき、ビジネスシーンでの利便性が向上しています。

さらに、IP電話には通話機能に加えて、通話録音や社内電話帳の更新といったさまざまな機能が組み込まれています。

これらの機能はビジネスに特化しており、電話のやりとりだけでなく、業務全体を円滑に進めることが可能です。

IP電話の仕組み

IP電話の動作プロセスは次の通りです。

  1. 発信者の音声を電気信号に変換
  2. 電気信号をIPパケットに変換
  3. インターネット回線を介してデータを転送
  4. IPパケットを電気信号に復号
  5. 電気信号を音声情報に復元
  6. 着信側に音声が届く

音声をIPパケットに変換するのは「VoIPゲートウェイ」と呼ばれる、電話回線とインターネット回線を中継する通信機器です。IPパケットは通信のために分割されたデータを指します。

これらの仕組みを理解することで、なぜIP電話がインターネット回線に接続されている必要があるのかが明確になるでしょう。

固定電話との違い

「IP電話」と「固定電話」では通話に使う通信回線が異なります。

前述した通り、IP電話はインターネット回線を使い通信を行いますが、固定電話の場合は電話専用の回線から交換局経由して音声が伝達されます。

IP電話の導入はインターネット環境が整っていれば簡単であり、導入費用や通話料金も固定電話よりも削減できます。

一方で、IP電話は通話品質が外部環境の影響を受けやすく、またフリーダイヤルや緊急電話(110や119など)の電話番号に発信できないといった懸念があります。

IP電話をWi-Fiで使う場合のメリット 5選

IP電話をWi-Fiで利用すると、どのようなメリットがあるでしょうか。具体的には以下5つのメリットが挙げられます。

  • ケーブル不要で自由度が高い
  • 電話端末の導入や増設が簡単
  • 設置場所に捉われない
  • 通話料金が安く済む
  • 導入コストを抑えられる
  • 各種機能やサービスと連携できる

それぞれがどのようなメリットなのか、以下順にご説明します。

ケーブル不要で自由度が高い

Wi-Fiを利用すれば、IP電話機に繋ぐLANケーブルが不要となります。これによってIP電話の可動域が向上し、Wi-Fiが届く範囲であればどこでも設置できます。

通常のIP電話では、LANケーブルを使って「ルーター」と「IP電話機」を接続する必要がありました。

LANケーブルが増えると、ケーブルが絡まったりホコリがたまったりして、外観や動線が悪くなる可能性があります。

Wi-Fiの場合、電波の届く範囲内ならどこでも通話できるので、配線やレイアウトに頭を悩ます必要がありません。

Wi-Fiは無線LANを使用して電波を飛ばすため、LANケーブルで接続する必要はありません。ケーブルが不要になることでオフィス周りが清潔で整然とし、仕事がスムーズに進む環境が整います。

また、有線での接続だと電話機ごとにLANケーブルを用意する必要がありますが、Wi-Fiなら複数の電話機を一括して接続することが可能です。

同時に接続可能な電話機の数は製品によって異なりますが、必要な電話機の数に合わせて製品を選ぶことでコストを抑えられるでしょう。

電話端末の導入や増設が簡単

IP電話をWi-Fiで利用すると、電話端末の導入や増設を簡単に行うことができます。

IP電話を有線で運用した場合、電話機を設置する際にLANケーブルの配線作業を行う必要があり、作業自体に手間がかかるだけでなく、しっかりと計画を立ててから配線しないと見栄えも悪くなります。

IP電話をWi-Fi(無線LAN)で運用した場合は、電話機をWi-Fiに接続するだけで利用できるようになりますし、電話機を増設する際も同じくWi-Fi接続するだけで完了なので、運用が大幅に楽になります。

また、Wi-FiであればスマートフォンでもアプリでIP電話が利用できるようになるので、スマートフォンならより導入や増設が簡単になるでしょう。

設置場所に捉われない

Wi-Fiを使ってIP電話を利用することによって、電波の届く範囲内であれば設置場所に捉われることなく、どこでも通話することが可能になります。

特に、IP電話をスマートフォンで運用すれば電話機の設置自体が必要なくなるので、より場所に捉われない電話運用ができます。

「フリーアドレス」といった自席を持たない働き方が徐々に普及する現代において、電話機を設置せずにどの席でもスマートフォンで会社の電話が使えるようになるためには、IP電話をWi-Fiで使うのは必須といえます。

通話料金が安く済む

IP電話には、特に携帯電話のキャリアと比べて安いといったメリットがあります。

携帯電話の通話料金は携帯キャリアによって異なりますが、概ね1分あたり20円~60円ほどです。

一方でIP電話アプリを搭載したスマートフォンの場合、携帯電話への通話は1分あたり10円~40円、固定電話への通話は1分あたり2円~3円となります。

また、スマートフォンをすべてWi-Fi接続のみでデータ通信を行えば携帯キャリアとの契約も不要になって、電話にかかるコストを大幅に削減できます。

さらに、IP電話アプリの場合は国際電話も可能です。国際電話の通話料金は通常高額ですが、インターネットを介したIP電話ならば費用を抑えつつ、気軽に国際電話をかけられる利点があります。

導入コストを抑えられる

IP電話をWi-Fiで使用する場合は、インターネット環境が既に整っていれば、電話機を置いてWi-Fiに繋ぐだけで利用できます。

そのため、電話を引くための開通工事や配線作業、電話加入権の取得が不要であり、初期費用を抑えることができます。

  • 電話加入権とは、NTT加入電話を契約する際に必要な権利のことで権利購入のために初期費用を支払う必要があります。また「施設設置負担金」とも呼ばれます。

またIP電話では、従来の電話機のほかに、PCやスマートフォンなどのさまざまなデバイスで利用可能です。

既存のデバイスをそのまま活用できるため新たな機器を購入する必要がなく、環境移行に伴うコストも低減できます。

一方、固定電話回線の場合は、NTTの加入手続きやオフィス内での設備工事などが必要で、導入の際には金額と手間がかかります。

導入にかかるコストや手間を削減できるという点は、IP電話をWi-Fiで使うメリットといえるでしょう。

各種機能やサービスと連携できる

IP電話自体のメリットとなりますが、IP電話サービスの多くは、固定電話に比べて多彩な機能が提供されています。

例えば、「電話帳機能」を活用することで、連絡先の一元管理がクラウド上で可能です。

この電話帳機能によって同じ電話番号を共有する社員同士の連絡先情報が自動的に同期されるため、ビジネス利用において非常に便利です。

さらに、IP電話サービスの中には、顧客情報を詳細に記録する機能やインターネットFAX機能などを搭載しているものもあります。

通常の電話機能に加えて、ビジネスプロセスを効率的にサポートする機能が利用できるのは魅力です。

このように、IP電話アプリは外部ツールとの柔軟な連携が可能であり、単なる音声通話に留まらない利便性を提供しています。

IP電話をWi-Fiで使う場合のデメリット 3選

IP電話をWi-Fiで利用する場合、Wi-Fi固有のデメリットも存在します。具体的には以下の3つです。

  • 通話が不安定になることがある
  • 障害物や電波距離の影響を受ける
  • 有線と比べてセキュリティが低い

それぞれがどのようなデメリットなのか、以下順に詳しくご説明します。

通話が不安定になる可能性がある

IP電話自体が通話をインターネット回線経由で行うため、通話品質はインターネットの通信状況に左右されます。インターネット回線が高速な状態の場合、通話品質に影響が出る可能性は低いでしょう。

しかし、インターネット接続を行うWi-Fiルーターやアクセスポイントが低スペックだったりすると、音声データのパケット送信にラグが生じたり、パケットロスが発生する可能性が高くなるため、通話が不安定になる可能性があります。

また、Wi-Fiのアクセスポイントが同じ環境下に複数あると、IP電話機やスマートフォンのWi-Fi接続に寄らぎが生じて通話が途切れてしまう恐れがあります。

特に、スマートフォンの場合は移動しながら通話するケースが多く、移動する先々でアクセスポイントが切り替わると、その都度通話が途切れて上手く会話ができなくなるため、注意が必要です。

障害物や電波距離の影響を受ける

IP電話をWi-Fiで利用すると、ルーターとIP電話機の間にある障害物や、電波距離の影響を受けて通話品質や安定性が低下する可能性があります。

LANケーブルを使ってルーターとIP電話機を接続した場合は、障害物や電波距離に関係なく一定の品質で通話することができます。

しかし、Wi-Fiの場合は間に障害物があったり距離が遠くなると電波強度が弱くなり、うまく音声データの送受信が行えず通話品質が低下し不安定になる恐れがあります。

Wi-FiでIP電話を利用する場合は、極力ルーターとIP電話機を近づけて利用するなどの注意が必要です。

また、同じWi-Fiルーターに接続している機器が増えると、通信領域が制限されるため通話品質が低下する場合があります。

有線と比べてセキュリティが低い

Wi-Fiの利点は、電波が届く範囲内でケーブルを使用せずにIP電話を利用できることです。ただし、ルーターに接続せずにIP電話を利用する状況は、第三者にアクセスされやすい可能性があります。

一度不正アクセスが許可されると、第三者による不正利用や、ルーターに接続されている他の端末の情報が盗み見られるリスクがあります。

そのため、有線接続よりもさらに堅牢なセキュリティ対策が必要です。

Wi-Fiの利用においては、パスワードを覚えやすい数字・アルファベットに設定することは避け、強力なパスワードを設定し、さらにセキュリティ対策をしっかり講じることが重要です。

こういった要因により、IP電話には品質のトラブルが固定電話に比べて発生しやすいため、IP電話の導入を検討する際にはインターネット環境の確認に加えて、IP電話事業者の選定において実績などを把握することが大切です。

総務省は、IP電話事業者を音声品質により3つのランク(A・B・C)に分けていますが、Aランクの事業者と契約することが推奨されます。

IP電話アプリの種類

IP電話アプリには、以下3つの種類があります。

  • 050番号でのみ利用できる「050電話番号型」
  • 0ABJ番号(市外局番の電話番号)が利用できる「0AB-J型」
  • 電話番号を使わない「電話番号不要型」

それぞれにどのような特徴があるのか、以下順に詳しく説明します。

050電話番号型

050番号型は、050で始まる11桁の電話番号を提供するIP電話アプリです。

<IP回線050 – 電話会社の特定番号 – 利用者の個別番号>という並びになっており、番号を見れば、サービスを提供している電話会社がわかります。

この050番号型は、次に説明する0AB-J番号型と異なり、地域に関連する番号が含まれていないため、携帯やスマホでも利用できるのが特徴です。

しかし、050番号型は通話品質などに厳格な技術基準がなく、通話時の音質がサービスによって異なる点が問題点と言えます。

さらに、サービスプロバイダを変更する場合は新しい電話番号の取得が必要なこともこのタイプの特徴ですが、一方で比較的安価で利用できるため、広く利用されています。

0AB-J型

0AB-J型は、一般的に通常の固定電話で使われる10桁の電話番号形式で提供するIP電話アプリです。

03などの市外局番で始まり、番号は<市外局番 – 市内局番 – 加入者番号>の順で構成され、地域ごとに異なる番号(加入者番号)が割り当てられています。

このタイプでは既存の電話番号を引き続き使用可能であり、IP電話でも利用可能です。

ただし、IP電話を使用する際には、総務省が規定する4つの通話品質基準(接続品質・総合品質・安定品質・ネットワーク品質)を満たす必要があります。

これらの基準をクリアすれば、IP電話でアナログ電話と同程度の機能と通話品質を実現でき、トラブルの心配はありません。

0AB-J型のIP電話アプリであれば、一定の品質が見込めることになります。

電話番号不要型

電話番号不要型は、LINE、Facebookメッセンジャー、Skypeなど、通話料無料のIP電話アプリです。電話番号不要型では、サーバーが中心となって、音声をデータに変えて送受信します。

通常、電話をかける際は「相手の電話番号を入力して発信」します。

しかし、電話番号不要型の場合はフレンドや友だちといった形で相手を自身の連絡先リストに登録し、電話番号という概念ではなく「フレンドや友だちに通話する」というボタン操作で発信し通話が実現します。

電話番号がないため企業などのビジネス用途では使いづらいですが、個人やフリーランスなどでは気軽に使えるため重宝されています。

Wi-Fi以外の接続方式

Wi-Fiを使用したIP電話の運用には、前述した通り長所と短所が存在します。

特定の状況下では、他の接続方法を選択するほうが賢明かもしれません。他の接続方法としては以下2つが挙げられます。

  • 有線LAN接続
  • 4G・5G

以下順に、Wi-Fi以外の接続方法2つについて詳しくご紹介します。

有線LAN接続

IP電話を利用するための手段として、IP電話機にLANケーブルを接続する方式があります。

この方法では、Wi-Fiを用いた無線接続と異なり、ルーターとの間に障害物があったり距離が離れていたとしても、通信が途切れる心配はありません。

また、有線接続の設定は無線よりも簡単で、物理的な接続が目に見える形で行えるため、スムーズに設定を完了することができます。

さらに、有線接続はセキュリティ面でも安心です。無線接続では第三者に不正に利用される可能性がある一方で、有線接続ではケーブルがつながれない限り安全です。

ただし、有線LANでの接続方式にはデメリットも存在します。

ルーターに多くの機器を接続する場合はLANケーブルを挿せる数に限りがありますし、どのケーブルがどれに接続されているのかがわかりにくくなります。

ケーブルが散らばることで物や足を引っ掛ける危険性も考えられます。ケーブルの長さにも制限があるため、IP電話機を移動させる際には制約が生じることも難点です。

有線LANによる接続方式のメリット・デメリットを把握したうえで、Wi-Fiがいいか有線がいいか検討しましょう。

4G・5G

「4G・5G」とは、スマートフォンにおけるデータ通信技術で、Wi-Fi範囲外などでスマートフォンでIP電話アプリが使えない場合に使用される接続方式です。

IP電話はこの通信方式を使用することが可能で、データ容量は消費しますが、通信は安定しています。通信速度はWi-Fiよりも劣りますが、アクセスポイントとの距離に左右されず、通信品質はある程度一定です。

外回りの営業活動が頻繁な場合や、利用場所を選ばずに通信したい場合は、4G・5Gは最適な選択肢と言えます。

ただし、この方法はスマートフォンなどのモバイル端末向けです。固定電話を無線で接続する場合は、Wi-Fiが唯一の選択肢となります。

まとめ

WiFiを使用してIP電話を利用すると、オフィスはケーブル不要でスッキリとした状態になり、通話中に移動しながら利用できるなど、メリットがいろいろあります。

ただし、通信の安定性は利用環境に依存するため、場合によっては通話音質が低下したり、通話が途中で切断されたりする可能性もあります。有線接続と比較してセキュリティが低下することも考慮すべきです。

そのため、IP電話をWiFiで利用する際には、通信環境を整え、セキュリティ対策を慎重に行うことが重要です。状況次第では、Wi-Fi以外の接続方式を検討しましょう。

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